小さなクルマ(写真提供 = Shutterstock)

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最小回転半径から読み解く小回りのきく「運転しやすいクルマ」とは

「運転しやすいクルマを買いたいのだけど、どれがいい?」「小回りのきくクルマってどれかしら?」――。運転が下手な筆者も、これはとても気になるところです。もちろん、クルマは、いろんな工夫の積み重ねによって運転しやすくなっているわけなので、スパッと、どのクルマがいいと言えるものではありません。けれども、運転しやすいかどうか、小回りがきくかどうかをチェックする際に、ひとつの目安になるのが「最小回転半径」です。これは、ハンドルを目いっぱいに切って徐行したときに描く半径のことで、この数値が小さいほど、比較的小回りがきくということになります。そこで、この記事では、主要なクルマの最小回転半径を調べて、どのクルマがどれくらい運転しやすいのか、比べてみることにしましょう。

小回りのきく「運転しやすい車」を探してみたら…

スマート・スマートフォーツーの外観(写真提供 = Shutterstock)

スマートフォーツーは小回りがきくという点では日本の軽自動車をしのぐ(写真提供 = Shutterstock)

下の表は、いま日本で新車として販売されている主要なコンパクトカーの「最小回転半径」を、半径が小さい順に並べたものです。

基本的に、ベースグレードのFFのデータをエントリーさせました。

ご参考までにコンパクトカー以外に、主要な軽自動車や、もうちょっと大きなクルマの最小回転半径も加えてみました。

ひとによって見方は異なると思いますが、だいたい最小回転半径が5.0m以下であれば、かなり小回りのきくクルマだと思います。

逆に、5.5mを超えるようなら、ちょっと取り回しにくいクルマという気がします。

この表から見えてくることを、以下にまとめていきたいと思います。

最小回転半径車種セグメント
3.3mスマート・スマートフォーツークーペA
4.1mスマート・スマートフォーフォーA
4.2mスズキ・アルト
4.3mルノー・トゥインゴA
4.4mダイハツ・ミライース
4.5mトヨタ・ヴィッツB
日産マーチB
ホンダ・N-BOX
4.6mダイハツ・ブーンA
トヨタ・パッソA
ダイハツ・トール/トヨタ・ルーミー/トヨタ・タンク/スバル・ジャスティスA
三菱ミラージュB
フォルクスワーゲン・アップ!A
スズキ・ハスラー
4.7mフィアット500A
ホンダ・フィット
(一部は4.9m)
B
日産ノート
(一部は5.2m)
B
マツダ・デミオB
スズキ・イグニスA
4.8mスズキ・スイフトB
スズキ・ソリオA
三菱デリカD:2A
トヨタ・アクアB
5.0mメルセデスベンツAクラスC
アウディA1B
5.1mフォルクスワーゲン・ポロB
BMW 1シリーズC
トヨタ・プリウス
メルセデスベンツCクラス
5.2m日産リーフC
フォルクスワーゲン・ゴルフC
プジョー308C
ルノー・メガーヌC
5.3mルノー・ルテーシアC
ミニ・クーパーB
プジョー208B
インプレッサスポーツC
マツダ・MAZADA3ファストバックC
トヨタ・クラウン
BМW3シリーズ
5.5mホンダ・シビックハッチバックC
アルファロメオ ジュリエッタC
日産セレナ
5.6mトヨタ・アルファード
5.9mトヨタ・センチュリー

 

「スマート」が群を抜く回転力

上の表でまず目に飛びこんでくるのは、シティコミューターとしてつくられた超小型のクルマ、スマートの回転のよさです。

このクルマは、1990年代にスイスの時計会社・スウォッチとダイムラー・ベンツの合弁会社によって生み出されました。

スウォッチが撤退したので、現在は、ダイムラー・ベンツによって生産されています。

2人乗りと4人乗りがあり、前者の「スマートフォーツー」(上の写真に見られるクルマ)は、最小回転半径がわずか3.3mと、驚くほど取り回しがいいです。

もし本当に、小回りがきくという点だけを基準にしてクルマを選ぶなら、スマートは有力候補かもしれませんね。

さすがメルセデスベンツが生産しているだけあって、衝突安全性も高いです。

けれども、スマートはコンパクトカーというよりも、自転車の感覚に似たシティコミューターとして割り切ってつくられており、室内はほんとうに狭いです。

マイクロカーともいわれています。

だから、あなたのクルマ選びの対象となるのかどうか、実際に試乗して、確かめたほうがいいでしょう。

 

断然運転しやすいルノー・トゥインゴ

街中のルノー・トゥインゴ

ルノー・トゥインゴは最小回転半径が驚くほど小さい(写真提供 = Shutterstock)

スマートや軽自動車を除き、一般的なコンパクトカーのなかでみると、フランスのルノー・トゥインゴの最小回転半径が際立っていますね。

それもそのはずで、ルノー・トゥインゴは、スマートとメカニズムを共用しています。

スマート並みの小回りのよさと、一般的なコンパクトカーならではの室内の広さを併せ持っています。

魅力的なクルマです。

トゥインゴは、本当に運転しやすいクルマで、別記事「外国車のプレミアムコンパクトカーお薦め12選!セグメント別にご紹介!」でもお伝えしたように、いちど乗ると、ほかの大きなクルマに戻れなくなる人もいるほどです。

万一衝突した場合に衝撃を緩和する空間(クラッシャブルゾーン)を確保するため、トゥインゴとスマートは、RR(リアエンジン・リアドライブ)という駆動方式を採用しています。

小さいけれども、衝突安全性も比較的高いといえるでしょう。

 

ヴィッツとマーチも健闘

街中のトヨタ・ヴィッツ(写真提供 = Shutterstock)

トヨタ・ヴィッツはBセグメントのコンパクトカーのなかでもとくに小回りがきく(写真提供 = Shutterstock)

続いて小回りのよさを示しているのは、トヨタ・ヴィッツ(ヤリスの先代車種)と日産マーチです。

この2台は、日産ノートやホンダ・フィットなど、Bセグメントで競合するクルマたちに比べて、ちょっぴり小ぶりです。

全長が短い分だけ、ライバルたちよりも小回りがきくようです。

トヨタ・ヴィッツは、弟分のトヨタ・パッソやルーミー。タンクよりも最小回転半径が小さいのですね。

凄いクルマです。

もしあなたがコンパクトカーのなかでいちばん小回りのきく、運転しやすいクルマを求めているなら、ヴィッツは有力候補といえます。

ただし、ヴィッツは1999年に初代が登場したころには、最小回転半径はもっと小さくて4.3mでした。

少しずつ巨大化していった結果、現在は4.5mになり、ちょっぴり運転しづらくなっているという一面もあります。

これはヴィッツに限らず、多くのクルマに見られる傾向です。

一方、日産マーチは、最小回転半径こそヴィッツと互角ですが、いまは販売台数でヴィッツに大きく水をあけられています。

かつて2代目マーチ(1992年~2002年)あたりは本当にいいクルマで、私も大好きでした。

けれども現行の4代目マーチ(2010年~)は、主として低開発国向けに生産されている面があり、質感や先進安全装備などでライバルに見劣りします。

次期マーチがどのようなクルマになるのか気になるところです。

 

軽自動車はバラツキも

日本でいちばん小さいクルマといえば、軽自動車ですね。

上の表にも、主要な軽自動車が上位に入ってきています。

全高が低くて、「元祖・軽自動車」というスタイリングのスズキ・アルトは、ルノー・トゥインゴやトヨタ・ヴィッツを上回るパフォーマンスを見せています。

アルトのように、純粋に乗りやすさを追求した軽自動車だと、このくらい小回りがききます。

アルトのライバルである、ダイハツ・ミライースも、4.4mとハイパフォーマンスを見せています。

ただ、もう少し室内の広さやSUV的な味つけにこだわった軽自動車は、意外に最小回転半径が大きいですね。

室内の広いホンダ・N-BOXは、最小回転半径が4.5m、おしゃれなSUVであるスズキ・ハスラーは4.6mです。

もちろん、十二分に小回りがきくほうですが、ヴィッツなどのコンパクトカーが割って入ってきています。

軽自動車は、ちょっぴりバラツキがあるとみたほうがよさそうです。

 

Bセグメントのクルマも上位に

街中のマツダ・デミオ(写真提供 = Shutterstock)

マツダ・デミオなど主要なBセグメントのクルマは小回りがいい(写真提供 = Shutterstock)

最小回転半径で見た場合、トヨタ・ヴィッツのほかに、ホンダ・フィット(先代)や日産ノート、マツダ・デミオ(現MAZDA2の先代車種う)などの有力なBセグメントのクルマたちもずいぶん健闘しています。

ホンダ・フィットや日産ノートはグレードによって最小回転半径にバラツキがあります。

ただ、基本的には、室内がかなり広い一方で、軽自動車に迫るくらいに最小回転半径が小さいモデルが多いです。

これは凄いことです。

小回りがきく、運転しやすいクルマといえば、いちばん小さいAセグメントのクルマ――。

もう、そう言い切れないくらいに、Bセグメントのクルマが運転しやすくなっています。

全長だけでなく、最小回転半径の数字も念頭に入れて候補を探したほうがいいでしょうね。

 

小回りのきく大きなクルマも

上の表を見ると、Cセグメント以上の大きなクルマのなかにも、意外に小回りのきく車種があることがわかります。

Cセグメントでは、2018年に登場したメルセデスベンツAクラスが、ついに5.0mを叩きだしました。

もう、表の上のほうにいるトヨタ・アクアが見えるくらいのレベルにきています。

さらに、メルセデスベンツCクラスも、最小回転半径が5.1mでした。

メルセデスベンツCクラスは、大きなクルマの部類に入るDセグメントに属しています。

それなのに、ミニ・クーパーやプジョー208、インプレッサスポーツのようなコンパクトカーより最小回転半径が小さいのです。

トヨタ・クラウンも、最小回転半径が5.3mです。

クラウンは、道幅のせまい日本市場をメインにしているので、全幅も1,800mと意外にコンパクトです。

その点も考えると、比較的乗りやすいクルマだといえます。

 

ひとつの目安としてチェックしよう

このように、最小回転半径に光をあてると、「コンパクトだから小回りがきく」とは言い切れない一面も見えてきて、面白いですね。

もちろん、最小回転半径だけで、どのクルマがいちばん小回りがきくか決めつけることはできません。

最小回転半径は、あくまでも徐行しているときの数値です。

もうちょっと速度を上げた状態でくねくねカーブを曲がる場合には、ほかの要因も視野に入れなければいけません。

それにタイヤを大きくしたりすれば、それだけで回転半径は変わってきます。

ご紹介したクルマでも、グレードによっては大きなタイヤを履いていて、最小回転半径が大きい場合があります。

けれども、ひとつの目安として、最小回転半径をチェックするくせをつけておくことは、意味があるといえるでしょう。

 

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

 

 

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COMPACT CAR .net 編集部

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2019年6月11日

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