世の中には「異種格闘技」というのがいろいろありますが、クルマの世界でこんな異種格闘技をしてみたら、何とも不思議な結果が出てきました。コンパクトカーのなかでも特にコンパクトな軽自動車と、乗用車のなかで特大なトヨタ・センチュリー。この2車種を対決させたら、とんでもない事実が見えてきたのです……。
目次
いきなり異種格闘技!この広さ対決で見えてきたものは…
出場車はこの2台
挑戦車 = ホンダの軽自動車 N-BOX
リングの青コーナーから登場してきたのは、いま日本で売れに売れているホンダの軽自動車、N-BOXです。
軽自動車といえば、商用車を除くと、昔はスズキ・アルトのように背の低い小さなクルマばかりでした。
けれども、1990年代にスズキがトールサイズのワゴンRを売り出して、状況が一変しました。
軽自動車には全長や全幅などの規制がありますが。ワゴンRは「そうだ!ボクらも上に大きくなれるんだ!」と、軽自動車たちに知らしめた1台です。
その後、軽自動車たちは摩天楼のごとく、ニョキニョキと上へ伸びていきました。
そして誕生した究極のスーパーハイトワゴンが、このN-BOXです。
私はよくカーシェアリングでこのクルマを試すのですが、ステーション(駐車場スポット)に行くと、N-BOXは、コンパクトカーよりも図体がデカいのですぐに見つけられます。
王車 = トヨタが誇る最高級車 センチュリー
リングの赤コーナーから出てきたのは”王車”、トヨタ・センチュリーです。
このクルマは、1967年に初代が誕生して以来、半世紀以上にわたり、要人を乗せるプレステージサルーンとして活躍してきました。
これぞ日本最高峰の名車です。
天皇陛下の即位パレードでも、このセンチュリーの特別生産車「センチュリーロイヤル」が使われています。
センチュリーの前では、トヨタ・クラウンも小さく見えます。
おっと、時間いっぱいです。
待ったなしです。
第1ラウンド:どっちが大きい?
まずは、両車、がっぷり四つで、互いの大きさ比べから始まりました。
挑戦車のN-BOXは、お世辞にもカッコいいとは言えない”ドヤ顔”で、王者を見下ろします。
【N-BOXの大きさ】
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1790mm
車両重量:890kg
これに対して、王車・センチュリーは見事な体格を誇示して、一歩も譲りません。
【センチュリーの大きさ】
全長:5335mm
全幅:1930mm
全長:1505mm
車両重量:2370kg
世の中に2トンを超える乗用車があったなんて、庶民の私は知りませんでした。
5メートルを超える全長は、ジャイアント馬場2人分以上です。
ビビりながら、レフェリーを務めさせていただきます。
これはどう見ても、センチュリーの勝ちですね。
挑戦車、N-BOXも高さで善戦するものの、やはり、ロングボディの王車を前にしては、かわいらしく見えてしまいます。
第2ラウンド:どっちが広い?
続いて、室内の広さを競う第2ラウンドのゴングが鳴りました。
ここで観客席からどよめきの声が!
なんとN-BOXは、室内から自転車を取り出すパフォーマンスで、王車・センチュリーに揺さぶりをかけてきました。
【N-BOXの室内】
室内長:2240mm
室内幅:1350mm
室内高:1400mm
N-BOXは、自転車でもベビーカーでも余裕で出し入れできるのです。
これに対して、王車・センチュリーは、車内から会社の重役さんたちに出てきてもらって、格の違いを見せつけます。
【センチュリーの室内】
室内長:2165mm
室内幅:1605mm
室内高:1185mm
私も新聞社時代に何度か乗りましたが、センチュリーの室内には、言葉で表しにくいほど優雅な雰囲気が漂っています。
けれども、意外な結果が出てきました。
日本最高峰のセンチュリーが、室内長では、軽自動車のN-BOXに水をあけられているのです。
室内幅ではさすがにセンチュリーの圧勝ですが、室内高ではN-BOXがダンゼン上回っています。
N-BOXが優勢です。
ここでレフェリーは不器用な手つきで電卓をはじいてみます。
室内の容積は、以下のとおりでした(たぶん)。
N-BOX = 4.2236立方メートル
センチュリー = 4.117667625平方メートル
N-BOXは、室内の広さで、なんと王車・センチュリーを撃破しました。
第3ラウンド:どっちのほうがよく見かける?
最後は、一般庶民から見たポピュラリティー(親しみやすさ)をめぐる対決です。
勝敗が見え見えの対決に、観客席から、ブーイングがわきます。
けれどもレフェリーは独走していきます。
全国軽自動車協会連合会が発表した2018年度(2018年4月~2019年3月)のデータによれば、N-BOXは、この1年間に23万9706台も売れました。
新車販売台数では、N-BOXは、日産ノートe-POWERなどを凌駕して2年連続のナンバーワンです。
N-BOXは、日本列島のあちこちを走っているポピュラーなクルマといえます。
これに対して、センチュリーは熟練の職人による手づくりの性格が強くて、月間50台しか生産できません。
どちらが身近なクルマかといえば、答えは火を見るよりも明らかですね。
総評:N-BOXはいろんな使い方ができそう!
この対決から見えてくるのは、N-BOXはコンパクトなのに、半端なく室内の広いクルマだということです。
そして身近な存在だから、工夫次第でいろんなふうに活用できそうです。
たとえば、私は、こんなふうに利用しています――。
カーシェアリングのマイN-BOXを書斎にする!
ある首都圏の主要駅から歩いてすぐの見晴らしのいい駐車場。
そこに駐車しているN-BOXのなかでエアコンをガンガンつけて、電話をかけたりしているオジサンがいたら、もしかしたら、それは私です!
マツダ・デミオ(現・MAZDA2)や日産ノートほどではありませんが、N-BOXも大手カーシェアリングサービスでたくさん用意されています。
最大手、タイムズカーシェアの公式サイトで、車種を絞って検索すれば、どこにN-BOXがあるのか、すぐわかります。
私は、たまにカフェの代わりに、N-BOXを20~30分ほど使います。
タイムズカーシェアなら、利用料金は15分で220円。
利用時間の10分くらい前から使えますので、20分ほどなら合計220円です。
セブンイレブンでコーヒーを買って乗りこめば、お得な個室カフェに早変わりです。
電話しても、書類を広げてもまわりの人の迷惑になりません。
そして室内は、あの天下のトヨタ・センチュリーを上回るほど広大なのです。
ちょっぴり小市民的に、会社役員の気分を味わっちゃったりすることもできるのです(シートの素材感はセンチュリーと雲泥の差ですが…)。
友達や取引先と「いつものN-BOXで」と待ち合わせしてもいいですね。
N-BOXはシートをいろんなかたちにアレンジできますから、快適な密談場所?に早変わりします。
マイN-BOXをいくつかキープしておいて、必要に応じてスマートに利用していけたらと、私は思っています。
自動運転の時代に広がる「N-BOX的な空間」
N-BOXみたいにコンパクトなクルマでも、センチュリー以上の広大な空間を私たちに提供してくれるのですね。
今回のヘンテコな異種格闘技から見えてくるのは、コンパクトなクルマがもつ空間的な可能性です。
これから日本には、いろんな自動運転のクルマが増えていきます。
おそらく、みんなでシェアする自動運転車がたくさん出てくることになるでしょう。
それらの自動運転車には、ぜひ、N-BOXみたいな、日本のちっちゃいクルマづくりのノウハウを生かしてほしいものです。
ちょいと公園まで、自転車を詰めこんで自動運転で送り迎えしてもらう!なんてことができるようになったらいいなと思いまっす。
軽自動車やカーシェアリングについては、下記のページでくわしい比較記事をまとめています。
こちらにも立ち寄っていただけたら、うれしいです。
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